ケップは小ぎれいで小さな街なのだが、牧歌的な雰囲気で自然が豊かなので、たくさんの動物を見ることができた。
牛の群れが闊歩していた?!
最初に見たのは放牧牛だった。
夕方に宿でくつろいでいると、外から何やら「カランカラン」という音が聞こえてきたので、何だろうかと思って目をやると、首の下にぶら下げられた大きな鈴を鳴らしながら牛が闊歩していたのだ。
牛は群れをなしていて、その数はおよそ20頭ほど。
首からぶら下がった紐を引きずりながら自由に歩いている。
しかし、それを管理する人の姿はどこにも見えない。
となると、牛の群れは時間を見計らって自主的にねぐらに向かって歩いているのだろう。そして、歩みはのんびりとしているのだが牛の群れに乱れはなかった。
これはきっと、牧草地とねぐらの間を自力で往復するように飼い主が牛に躾をしたからだろう。ならば、牛にはそれを実行する充分な能力があることになる。
理想的な酪農はほったらかし
ということは、草地さえあればほったらかしで酪農ができるということになる。
それを確かめようとしてネットを見てみると、搾乳舎と草地だけで酪農をやっているという例があった。
そこの牛は草地で食べて寝て、乳が張れば搾乳舎に戻ってくるという。
また、交配も出産も自然に任せているのだそうだ。
それでも、草を求めて歩き回ることで丈夫になるから、牛が病気になることはほとんどないという。加えて、健康な牛から産出された乳は極めて良質なのだそうだ。
こういうやり方だと牛舎も配合飼料も要らないし手間もかからないから、非常に少ないコストで酪農ができることだろう。牛のほうも自由で健康だから幸せなはずなので、ウィンウィンの関係だというわけだ。
つまり、ケップでは理想的な酪農をやっていると言えるだろう。
というか、所得の低いカンボジアではこうした酪農しか成り立たないのだろうが…。
古木の上に鷹がいた
次に見たのは鷹だった。
それは道路の端にある古木の上に止まって微動もしていない。
あまりに動かないので置物かと思ったのだが、近寄って見ていると時々動くので確かに本物だった。近づく私のことをまるで意に介する様子がなく、実に泰然としていて風格があった。
しかし、足には輪がかかっていてそれは鎖に繋がっているので、大空を飛びまわる自由を奪われて可哀想だなと私は思った。
けれども、後でネットで調べてみたら、私の心配は杞憂だったようだ。
狩りをする時の鷹は俊敏で力強いのだが、それは親に教えられて身に付く後天的なものだという。普段はバタバタせずにじっとしていることが多いから、家の中でペットとして飼うのも容易なのだそうだ。
クリッとした眼が可愛いので、ペットとして人気になる要素は確かに高いと感じられた。
ケップは人にも動物にも優しい街
他にも、人懐っこいサルとか、レストランに出没するトカゲとか、ネズミと見まがうほどほども大きいヤモリとか、たくさんの動物を見ることができた。
自然豊かなケップは人にも動物にも優しい街だと私は思う。